missing tragedy

今日も君とご飯が食べたい

憑かれた娘

 薄墨色の闇の中、一筋の光が室内の石畳を白く染めていた。

 簡素な窓格子を隙間風が通り抜け、鶯色の髪の少女は身震いする。

 初夏といえども夜は冷える。温かい物が良いだろう――そのような話を友人から聞いたのも、今はもう遠い昔のような気がした。

 遠くからは花火の音と賑やかな笑い声が届く。少女の心を占めるのは、悲しみでも怒りでも羨望でもない。

 唯々、純粋に。諦めと安堵の気持ちだけだった。

 自身の腹部を見下ろし、異変に苦笑する。そこは既に元の形を定めていない。禍々しい靄に包まれ、周りの闇に溶けるように歪んでいた。中心には七色に滲む鉱石が淡い光を放つ。

 少女はゆっくりと黄金色の瞳を閉じた。ここ三日のうちの出来事が瞼を過る。

「……お腹減ったなぁ……」

 眦から温かな雫が一粒、冷ややかな床へと零れ落ちた。